城主が年に一度天守で拝する白髪の刑部姫
どんな伝承か
姫路城の天守に棲むという刑部姫は、正体がよく分からない。草双紙では狐だとされ、年格好についても、女盛りの年増だとする話と、老女だとする話の二通りがある。老女だとする側の言い分によれば、この城の城主となった者は、毎年一度はかならず天守櫓のいちばん上まで登り、城の主である刑部姫のご機嫌をうかがわなければならない。殿様はうわべだけの城主で、本当の主は刑部姫だからだという。そしてそのとき、人間の城主の目に映るのは白髪の老婆の姿だと語り伝えられている。
原典より
その時人間の方の城の主の眼に見えるのは白髪の姥だと謂ひ傳へられてゐる。—— 民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
民俗怪異篇(磯清・磯清・民俗怪異)
『民俗怪異篇』は、磯清が著した民間の怪異をめぐる随筆集である。馬を襲う魔物ギバとその禁厭、阿波の首切れ馬「夜行さん」、姫路城の刑部姫や猪苗代城の亀姫などの城の怪、化け猫、灯火による占い、秩父三峰の狼の信仰と狼の怪、怪談を題材とする落語を取りあげ、各地の言い伝えや古い記録を引きながら語る。序に続いて「馬の災と馬の怪」「城の主」「猫」「灯の占」「狼の噂」「落語に存在する怪談」の六篇を置き、それぞれを小見出しの短い話に分ける。