嵐山に棲んだ兄弟の鷲と近文の名
どんな伝承か
オサラッペ川が石狩川に落ち合うあたり、今は嵐山と呼ばれている一帯は、その昔、樹木が茂り奇岩が重なり合う人跡まれな深山であった。ここに兄弟の鷲が棲んでいて、近文のあたりを飛び回っては小鹿や兎などを捕えて来るのを、丸木舟で石狩川を上り下りするアイヌがよく眺めたという。大きな鳥だという噂は次々に伝わったが、人が入り込んでくるのを恐れたものか、鷲はいつしかどこかへ飛び去ってしまった。人々はその印象を忘れかね、鷲の棲んだ土地をチカツプニと呼び、その音を近文の字に当て、意味を取って鷹栖と名づけたのだと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。