桑を摘む日に破裂した磐梯山
どんな伝承か
柳田国男は、猪苗代湖の岸では東南の一隅が最もよいと書いている。九月の夕月の晩、山潟の停車場で汽車を降り、疏水の上流の橋を渡って少し行くと山裾の高みに出た。浜の松原の梢の上に湖水が広がり、そこに磐梯山が映っている。土地の人の話では、二十年前の五月の二十何日かにこの山が破裂した日は、変な日だと思いながらも忙しくて皆が桑を摘みに出ていたそうだ。このあたりからは山がいちばんよく見え、それだけに恐ろしかったという。やがて山は背後に遠のき、船津の家々には灯だけが見えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。