狐を馴らした学者・孫左衛門
どんな伝承か
右の孫左衛門は村には珍しい学者で、常に京都から和漢の書を取り寄せて読み耽っていた。少し変人という方であった。狐と親しくなって家を富ます術を得ようと思い立ち、まず庭の中に稲荷の祠を建て、自身京に上って正一位の神階を請けて帰った。それからは日々一枚の油揚を欠かすことなく、手ずから社頭に供えて祈願をしたところ、後には狐が馴れて近づいても逃げず、手を延ばしてその首を抑えることさえできたという。村にいた薬師の堂守は、我が仏様は何物も供えないが孫左衛門の神様よりは御利益があると、たびたび笑い事にしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。