愛宕山の麓で狐と取った相撲
どんな伝承か
菊蔵が柏崎の姉の家に用があって行き、振る舞われた残りの餅を懐に入れて愛宕山の麓の林を過ぎると、象坪の藤七という大酒呑みで仲のよい友に行き会った。林の中だが少し芝原のある所である。藤七はにこにこして芝原を指し、ここで相撲を取らぬかという。菊蔵は承知して二人でしばらく遊んだが、藤七はいかにも弱く軽く、自由に抱えては投げられるので面白いまま三番まで取った。別れて四五間行ってから気づくと餅がない。相撲場に戻って探したが無い。後日、酒屋で藤七に会って話すと、その日は浜へ行っていた、相撲など取るものかというので、狐と相撲を取ったことがついに露顕した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。