小正月の路ですれ違う赤い顔
どんな伝承か
正月十五日の晩を小正月という。背の低い子供らは福の神と称して四五人で群れを作り、袋を持って人の家に行き、明の方から福の神が舞い込んだと唱えて餅をもらう習慣がある。背が伸びればこの晩に限って決して家の外に出ない。小正月の夜半過ぎは山の神が出て遊ぶと言い伝えているからである。山口の字古立におまさという今三十五六の女がいる。まだ十二三の年、どういうわけか一人で福の神に出て、所々を歩いて遅くなり、淋しい路を帰ってくると、向こうから丈の高い男が来てすれ違った。顔はすてきに赤く眼は輝いていた。袋を捨てて逃げ帰り、大いに患ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。