国道を覆った黒雲と飛び交う火の玉
どんな伝承か
著者の友人某が、大迫近くの国道を真昼に車で走っていたときのことである。ガソリンは十分にあり、たった今まで何の不都合もなかったのに、いきなりエンジンが不調となって山の中で停止した。対向車はほとんど来ない。仕方なく車内で待っていると急に空が暗くなりはじめ、車をカバーで覆われたように感じたという。フロントガラス越しに空を覗くと、一面に線香花火のような火花が散り、火の玉が縦横に飛び交った。某が驚いて顔を伏し、恐る恐る見上げると青空が戻っていて、黒雲はどこにも見当たらない。エンジンも復調した。通りかかった対向車の相手は、ずっと変わらない上天気だったと笑って立ち去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。