上三栖の米作が食べた柴の葉の握り飯
どんな伝承か
紀州西牟婁郡上三栖の米作という男は、神隠しにあって二昼夜ののちに帰ってきた。その間は神に連れられて空を飛び、方々の山や谷を巡っていたと語った。何を食べていたのかと問われると、握り飯や餅菓子を食べていたと答えて、袂からその残りを取り出して見せたが、よく見るとそれは柴の葉だった。宇井可道の「璞屋随筆」に載る話で、随筆が書かれた時点から九十年ほど前の出来事だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。