ザシキワラシに行き逢った娘
どんな伝承か
旧家にはザシキワラシという神の住む家が少なくない。この神は多くは十二三ばかりの童児で、折々人に姿を見せることがある。土淵村大字飯豊の今淵勘十郎という人の家では、近ごろ高等女学校にいる娘が休暇で帰っていたが、ある日廊下ではたとザシキワラシに行き逢い、大いに驚いた。これは正しく男の童であった。同じ村の山口なる佐々木氏では、母人が一人縫物をしていると次の間で紙のがさがさという音がした。その室は主人の部屋で、その時は東京に行って不在であったから、怪しく思って板戸を開いて見ても何の影もない。しばらく坐っているとしきりに鼻を鳴らす音がした。さては座敷ワラシであったと思ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。