鶏が告げた偽の花嫁
どんな伝承か
昔々これもある所にトトとガガがあり、娘の嫁入り支度を買いに町へ出るとて戸を鎖し、誰が来ても開けるなと言い置いて出た。昼の頃ヤマハハが来て娘を取って食い、娘の皮を被って娘になりすましていた。夕方に二人の親が帰り、おりこひめこ居たかと呼べば、ああいたます、早かったなしと答える。翌朝、家の鶏が羽ばたきして、糠屋の隅っ子見ろじゃ、と啼いた。常と変わった啼きようだと親は思った。花嫁を送り出そうとおりこひめこを馬に載せる時また鶏が啼き、おりこひめこを載せないでヤマハハ載せた、と聞こえる。繰り返すので親も気づき、ヤマハハを馬から引き下ろして殺した。糠屋の隅を見に行くと娘の骨が多くあった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。