青麻権現の岩窟に現れた常陸坊海存
どんな伝承か
常陸坊海尊と名乗る自称長寿者は、九郎判官に随従していた頃に達谷で仁羹という朱色の肉を食って不死になったと語り、小野太左衛門はこれに感歎して主人の伊達政宗に言上した。この者は後に清悦と名を改めた。その清悦が岩切の青麻権現の岩窟に出現したのは、清悦物語が世に出てから十五年目の天和二年であったという。鈴木所兵衛という信心深い盲人が、彼に教えられて天に祈り、目が開いたという奇跡もあった。そのときは気高い老人の姿で現れ、吾は常陸坊海存、今の名は清悦であると名乗り、窟に大日・不動・虚空蔵の三尊を祭ると聞くと、自分の念ずるのも日月星だから今より三光穴と名づけるべしと言い、岩窟に入って紫煙とともに上下したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。