右手が止まらず回り続けた奇病の女
どんな伝承か
東北帝国大学附属病院の加藤内科に、右手が風車のように回り続けて止まらない患者が入院した。掌を八つ手のように広げたまま朝から晩まで高速で回転し、無理に押さえようとすると逆向きにいっそう激しく回り出す。動きが止まるのは眠っているあいだだけだった。患者は同じ病院で小使いとして働いていた五十一歳の女性である。震顛舞症と呼ばれる、脳の運動をつかさどる器官の故障によるもので、当時の医学では治療の手立てがなく、自然に治らない限り死ぬまで回り続けるだろうと言われた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。