塀の上から馬を操る狐
どんな伝承か
明治初年のこと、松江市の母衣町に鈴木岡右衛門という人があり、門の横に厩を設けて馬を飼っていた。ある夜、馬がしきりに跳ねるようで厩が騒々しいので、台所へ行って小窓からのぞいて見ると、月夜であったが、一匹の狐が厩の裏の高塀の上にいて、後肢を揃えて後ろへ蹴り跳ねて見せている。その影が厩の高窓の障子に映ると、馬は狐のする通りに後肢で厩の板壁を蹴るのが、手に取るように見えた。狐が馬に催眠術のようなものをかけたらしいと言わねばならない、と著者は記す。
原典より
スルと馬が狐のする通りに後肢で厩の板壁を蹴るのが手に取る如くに見へた。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。