角石を抱いて音もなく倒す狐
どんな伝承か
著者の家で、縁側の下を仕切り、表に竹の横桟を四、五本わたして家鴨の寝所にしていたところ、ある夜、狐が来襲して竹桟の間を無理にこじ開け、家鴨を一羽奪い去った。翌日から竹桟の外に、長さ二尺内外・五、六寸角で重さ五、六貫もある石材を数本立てかけて堅固な防柵とした。ところがその夜もまた狐が来襲し、石材を二本刎ね退けて家鴨を騒がせた。重い石材を音も立てずに退けるのが不思議だというので、若い叔父や叔母たちが月夜に雨戸の節穴からのぞき見た。すると狐は縁側の下に寄り、一本の支柱石を前肢で抱いて、仰向けに反り返り、石材とともに倒れた。石材は狐の軟らかい肉体を褥にしてやんわり倒れるので、少しも音が立たなかったのだという。
原典より
石材は狐の軟かい肉體を にしてャンワリと倒れるのだから、少しも音が立たないのであつたさうな。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。