麻疹の仔狐のため医者を招く狐
どんな伝承か
狐が難産のとき人に化けて駕籠で医者を迎え、生まれたあとで医者をもてなしたという話は、昔から各地にある。著者の郷里でも明治より前、ある夜、麻疹で二人の子が苦しんでいると言って町医者を呼びに来た者があった。医者は病気の子を手当てし、酒食をふるまわれて送り届けられた。ところが翌日、医者が出向いたという場所の山林で、仔狐が二匹病死しており、そのそばに薬や土瓶が散らばっていたという。著者は、狐が好意から人に勧める飲食物はみな本物だと述べている。
原典より
明治前に著者の郷里でも、或夜麻疹で二人の子供が難儀するとて町 者某を迎へに来て、病兒を治療させた時にも醫者は酒食を されて、送り回らせられたが、…—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。