師範学校運動場に現れた白昼の狐
どんな伝承か
狐が身を守る武器の一つは放屁だという例である。かつて松江市の城山のふもとにあった師範学校附属小学校の運動場に、昼日中、野狐が一匹現れた。数百人の児童が教師と一緒に三方の門を閉め、四方から追い回したが、狐はすばしこく逃げて捕まらない。そこで犬を一匹連れ込んでけしかけると、犬は狐を追い詰めて噛みつきかけたところで、急にきりきり舞いを始めた。その隙に狐は生徒の袖の下をくぐり、木の柵を跳び越えて城山の中へ逃げ込んだ。著者は、言い伝えどおり犬に臭い屁をかけたのだろうとみている。
原典より
犬は狐を追窮して既に之を噛み附きかけ俄然キリ舞ひをしたが、其隙に狐は走って生徒の袖を下を潜り、木柵を飛躍して城山の内へ れ入った。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。