色川郷樫原の一蹈鞴(ヒトツダタラ)退治
どんな伝承か
紀伊国続風土記巻八十、牟婁郡色川郷樫原の条に載る話。昔、一蹈鞴と称する妖賊があって、熊野の神宝を奪い、雲取の旅人を掠めた。狩場刑部左衛門なる者が三山衆徒の頼みに感じてこれを退治し、その功によって三千町ある寺山を色川郷十八村の立合山にしてもらい、死後はこの地に王子権現として祀られたという。南方熊楠はこのヒトツダタラをただの泥坊ではあるまいとし、熊野の山中には今でも「一本ダタラ」という怪物が住み、幅一尺ばかりの大足跡を一足ずつ雪の上に印して行くという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。